4℃上がって残るスキー場は7カ所。北海道3・東北2・群馬と長野の県境2を、雪の日の気温で当てはめる
北大などの研究で、気温が4℃上がると天然雪だけで安定して営業できるスキー場は全国349カ所中7カ所。報道によれば内訳は北海道3、東北2、群馬・長野県境2。全国397カ所の「雪が降る日の気温」を並べると、−8℃より寒いのは16カ所で、北海道はちょうど3カ所でした。
気温が産業革命前より4℃上がると、天然の雪だけで安定して営業できる日本のスキー場は、全国349カ所のうち7カ所しか残らない。北海道大学と森林総合研究所の研究チームによるこの結果が、10月6日にオルタナの記事(Yahoo!ニュース)で紹介されました。
研究そのものは8月に発表されています。論文は日本雪氷学会誌『雪氷』88巻4号に載った吉沢直さん(北海道大学)と勝山祐太さん(森林総合研究所)のもので(J-STAGE、北海道大学の発表)、気候モデルの5km格子の将来予測に積雪のシミュレーションを重ねて、スキー場ごとに天然雪の営業可能性を見ています。
| 全面営業できる | 一部営業できる | |
|---|---|---|
| 2℃上昇(2030〜2091年ごろ) | 53カ所 | 108カ所 |
| 4℃上昇(2050〜2111年ごろ) | 7カ所 | 26カ所 |
人工降雪は含みません。「雪がなくなる」のではなく、「自然に降る雪だけでは足りなくなる」という結果です。
論文はスキー場の名前を出していない
大学の発表と論文の要旨にあるのは、「北海道や長野県など、緯度と標高の高い地域が相対的に有利」というところまでです。どの7カ所なのかは書かれていません。
オルタナの記事は、7カ所の内訳を北海道3、東北2、群馬県と長野県の県境2としています。どこから出た内訳かは記事からは分かりませんが、この記事ではこの内訳を手がかりにします。
当サイトは全国397カ所のスキー場について、雪が降った日の平均気温を測っています(直近3冬、ゲレンデ中腹の標高に補正)。気温が4℃上がったときに雪が雨に変わるかどうかは、まずこの数字で決まります。雪の日がいま−1℃の場所は、4℃上がれば雨の日になります。−10℃の場所は、4℃上がってもまだ雪です。
雪の日が−8℃より寒いのは、全国で16カ所
雪の日の平均気温が−8℃以下のスキー場を、寒い順に並べました。
| スキー場 | 地域 | 雪の日の気温 | 中腹の標高 | 平年の降雪 |
|---|---|---|---|---|
| 旭岳 | 北海道 | −11.6℃ | 1,359m | 388cm |
| 志賀高原 渋峠 | 群馬・長野県境 | −11.3℃ | 2,167m | 333cm |
| 大雪山層雲峡 黒岳 | 北海道 | −11.0℃ | 1,271m | 396cm |
| 志賀高原 寺小屋 | 長野 | −9.8℃ | 1,935m | 333cm |
| 志賀高原 横手山 | 長野(渋峠に接する) | −9.7℃ | 1,911m | 333cm |
| 志賀高原 熊の湯 | 長野 | −8.9℃ | 1,788m | 333cm |
| 万座温泉 | 群馬 | −8.7℃ | 1,804m | 255cm |
| 焼額山 | 長野 | −8.6℃ | 1,752m | 333cm |
| 志賀高原 一の瀬ファミリー | 長野 | −8.6℃ | 1,750m | 333cm |
| 日光湯元温泉 | 栃木 | −8.4℃ | 1,669m | 214cm |
| 志賀高原 東館山 | 長野 | −8.3℃ | 1,707m | 333cm |
| 奥志賀高原 | 長野 | −8.2℃ | 1,680m | 333cm |
| 開田高原マイア | 長野 | −8.2℃ | 1,846m | 250cm |
| 高峰マウンテンパーク | 群馬 | −8.1℃ | 1,936m | 145cm |
| キロロリゾート | 北海道 | −8.0℃ | 823m | 331cm |
| 丸沼高原 | 群馬 | −8.0℃ | 1,665m | 249cm |
平年の降雪は直近12冬の平均。志賀高原の各スキー場は気象モデルの同じ格子に入るため、降雪は同じ値になります。
北海道でこの線を越えるのは、ちょうど3カ所です。 旭岳、黒岳、キロロ。報道の「北海道3」と数が合います。
群馬と長野の県境では、渋峠と横手山が飛び抜けています。 渋峠のスキー場は峠をはさんで群馬県と長野県にまたがり、横手山はその長野側に続いています。標高2,000mを超える場所で雪の日が−10℃前後になるのは、日本ではここだけです。報道の「県境2」が、この2カ所かその近くである可能性は高いと考えます。
東北には−8℃以下の場所がありません。 いちばん寒いのは天元台高原(山形、−7.8℃)、次が月山(山形、−7.4℃)、秋田八幡平とグランデコ(−6.4℃)です。東北の2カ所は、気温だけで見ると候補がはっきりしません。月山は春から営業するスキー場なので、どの季節を「営業」と数えるかでも答えが変わります。
ここに挙げたのは当サイトの気温データによる当てはめで、論文の7カ所そのものではありません。 論文は積雪の量と日数を1カ所ずつシミュレーションしていて、当サイトは雪の日の気温だけを見ています。
いちばん雪が多い場所が、いちばん危ない
この結果でいちばん驚くのは、名前が挙がっている地域に、日本で雪がいちばん多い新潟の豪雪地帯が入っていないことです。
| スキー場の数 | 雪の日の気温(中央値) | |
|---|---|---|
| 北海道 | 87 | −4.6℃ |
| 群馬・長野 | 88 | −4.5℃ |
| 東北 | 89 | −3.0℃ |
| 新潟 | 48 | −1.6℃ |
| 全国 | 397 | −3.5℃ |
新潟は降雪量では日本一ですが、雪の日の気温は全国でいちばん高い部類です。日本で降雪が多い上位20カ所の雪の日の気温は、中央値で−1.6℃でした。日本海を渡ってきた湿った空気が、標高の低いところに、0℃に近い気温で大量の雪を降らせているからです。湯沢の谷では、雪の多い低いスキー場ほど雪の日が暖かいという形で、すでに差が出ています。
雪の日が−1.6℃の場所に4℃を足すと、+2.4℃になります。実際の変化はこんなに単純ではありませんが、方向ははっきりしています。量の多さは、暖かさへの備えにはなりません。
いま予約する人にとっての意味
今シーズンや来シーズンの予定は変わりません。 2℃上昇でも早くて2030年代、4℃上昇は2050年以降のシナリオです。
長く通う場所を選ぶなら、標高と緯度は考える価値があります。 雪の日がいま−8℃より寒い場所は、北海道の大雪山と、志賀高原から万座にかけての上信越の高地に集まっています。どちらも雪質の評価でも全国の上位に入る場所です。
深い雪を見に行くなら、早いほうがいい理由があります。 新潟の豪雪は、日本の雪のいちばん特別なところです。そしてそれは、温暖化にいちばん弱い仕組みの上にあります。
測り方と限界
- 雪の日の気温は、ERA5再解析の日ごとのデータから、降雪が1cm以上あった日の平均気温を出し、標準の気温減率(1kmあたり6.5℃)でゲレンデ中腹の標高に補正したものです。直近3冬(2023/24〜2025/26)の値です。
- 平年の降雪は直近12冬(2014/15〜2025/26)の平均で、山の雪は実際より少なめに出ます。比べるときは順位や差を見てください。
- 研究の数字(349カ所、7カ所、26カ所、53カ所、108カ所、時期)は論文と北海道大学の発表から、7カ所の地域の内訳はオルタナの記事から取りました。どの7カ所かは公表されていません。
- 当サイトは全国397カ所を数えています。研究の349カ所と数が違うのは、スキー場の数え方が違うためです。
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